同じコーヒー豆でも精製方法が違えば、コーヒーの味わいが大きく変わることは広く知られています。
そのため、コーヒーの味を決める要素としてしっかりと理解しておくことが肝心です。
この記事では、一般的な精製方法から、スペシャルティーコーヒーと呼ばれる品質の高いコーヒー豆の精製方法まで分かりやすく解説しています。
- コーヒー豆・コーヒーチェリーの構造
- コーヒー豆の7つの精製方法
- 精製方法による味わいや香りの違い
喫茶店やカフェの店舗運営を10年以上経験。コーヒーインストラクター1級(JCQA)・SCAJなどコーヒーに関する資格を保有。
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コーヒー豆とは?
まずは、コーヒー豆について復習するところから始めましょう。
コーヒー豆は、コーヒーの木に実ったコーヒーチェリーの種の部分です。
さくらんぼのように赤色の実は、糖度が高く果肉部分は少なく、ほとんどはコーヒー豆(生豆)です。
コーヒー豆・コーヒーチェリーの構造
コーヒーチェリーを半分に割ると、果肉と種子が2つ入っており、外皮に包まれています。
種子の中にコーヒー豆(生豆)が入っていますが、生豆はシルバースキンの上にパーチメントと言われる層があり、さらにミューシレージが覆っています。
水分量の多い取れたてのコーヒーチェリーのミューシレージは、ヌルヌルとしており種子をきれいに取りにくいです。
そのため、加工しやすい状態にする必要があり、乾燥や精製を行わなければなりません。
コーヒー豆の精製方法
コーヒー豆の精製で大切なことは、種子をきれいに取り出して乾燥させることです。
それでは、7つの精製方法について分かりやすく解説をしていきます。
- ナチュラル
- ウォシュト
- パルプドナチュラル
- ハニープロセス
- スマトラ式
- アナエロビック・ナチュラル
- アナエロビック・ウォッシュト
1.ナチュラル
収穫したコーヒーチェリーを天日干しにする伝統的な手法。
今のような皮剥き機(パルパー)が登場する前に行われていた手法で、余計な機械や水を使わないシンプルな精製方法です。
最も特徴的なのが、独特のフレーバーを楽しめることです。収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させることで、発酵が進みコーヒー豆に独特のフレーバーを移します。
ナチュラルで精製されたコーヒーは、熟したベリー系の果物の香りがして、重厚なボディ感のある味わいになる傾向。
- 水の無い地域でも精製できる
- 果実味のある香りが楽しめる
- 品質を安定させるのが難しい
- 広い作業場が必要なので生産効率が悪い
ナチュラルの精製方法の手順についてまとめてみました。
収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥台に並べて天日干し
コーヒー豆の水分量が10〜11%になるまで乾かしてから脱穀を行う
コーヒー豆を取り出して出荷
2.ウォッシュト(ウォッシュド)
「ウォッシュト」は水を使用した精製方法で、現代ではこの手法が一般的。
コーヒー豆の味わいを決める発酵具合をコントロールしやすく、天候にも左右されにくいので生産と味わいが安定します。
「ナチュラル」と比較すると精製工程が多くなりますが、その分コントロールがしやすく、生産者からしても低リスクな精製方法となります。
ウォッシュトで精製されたコーヒーは、水で洗われてるためスッキリとした口当たりのいい味わいが特徴で、クリアな酸味が感じやすい傾向にあります。
- 生産と味わいが安定する
- 機械を使って選定するので欠点豆の混入が少ない
- 大量の水を使用する
- 設備の整った精製所が必要になる
ウォッシュトの精製方法の手順についてまとめてみました。
収穫したコーヒーチェリーを選り分ける(ソーイング)
皮剥き機(パルパー)を使って皮剥きを行う
水槽にコーヒー豆を入れて発酵を行なって、表面の糖分を洗う
コーヒー豆の水分量が10〜11%になるまで乾かしてから脱穀を行う
脱穀を行い、コーヒー豆を取り出して出荷
3.パルプドナチュラル
「ナチュラル」と「ウォッシュト」のいいとこ取りをしたような精製方法で、セミウォッシュトとも言われる。
ミューシレージを残したまま乾燥させるので、ウォッシュトよりも甘味があり独特な香りの豆に仕上がる傾向にあります。
- 未成熟豆の選別ができ品質が高くなる
- 精製に大量の水を使わない
- 機械の導入に費用が掛かる
ウォッシュトの精製方法の手順についてまとめてみました。
収穫したコーヒーチェリーを選り分ける(ソーイング)
皮剥き機(パルパー)を使って皮剥きを行う
コーヒー豆の水分量が10〜11%になるまで乾かしてから脱穀を行う
脱穀を行い、コーヒー豆を取り出して出荷
4.ハニープロセス
コスタリカやパナマなどの中南米の農園では、パイプドナチュラルをハニープロセスと呼ぶことが多いです。
違いとしては、パイプドナチュラルよりも使用する水が少なく、パルパーの時に果肉やミューシレージを意図的に少し残すこと。
残したミューシレージの割合で、
- ブラックハニー:50%以上残して、長期乾燥
- レッドハニー:50%以上残して、短期乾燥
- イエローハニー:25%〜50%を残す
- ホワイトハニー:〜25%を残す
と分けられます。
仕上がるコーヒー豆の色合いも異なる
- 未成熟豆の選別ができ品質が高くなる
- 精製に大量の水を使わない
- コーヒーの味わいや香りを細かく調整できる
- 機械の導入に費用が掛かる
5.スマトラ式
スマトラ式は、インドネシアのスマトラ島から名付けられた精製方法です。
通常コーヒー豆の精製では乾燥のプロセスは1度ですが、スマトラ式は2度目の乾燥プロセスがあります。
収穫時期に雨が多いスマトラでは、収穫を行った農家が予備乾燥を行うことで、精製所での本乾燥の時間を短縮しています。
- インドネシアらしい風味が楽しめる
- 乾燥時間が短縮できる
- 脱穀時に豆が痛むことがある
スマトラ式の精製方法の手順についてまとめてみました。
収穫したコーヒーチェリーを選り分ける(ソーイング)
果肉とミューシレージの除去
コーヒー豆の水分量が30〜35%になるまで乾燥
脱穀後に再度乾燥を行う
コーヒー豆の出荷
6と7.アナエロビック・フォーメンテーション(嫌気性発酵)
コーヒーの精製方法としては歴史の浅いアナエロビック・フォーメンテーションですが、今までにないフレーバーを生み出せることで注目を集めています。
日本語では、嫌気性発酵(けんきせいはっこう)と表記され、酸素に触れない状態で活動可能な微生物の働きで発酵を行う方法です。
コーヒー豆に独特なフレーバーを持たせるには、コーヒーチェリーの発酵過程が非常に重要になってきます。
従来の方法だと、空気に触れることで活発に働いていた微生物による発酵でしたが、その働きを抑えて今までとは異なる微生物の発酵により新たなフレーバーを生み出すことが可能になりました。
ちなみに、仕上げの工程によって、
- アナエロビック・ナチュラル:そのまま乾燥させる
- アナエロビック・ウォッシュト:水で洗ってから乾燥させる
精製方法の名称が異なります。
- これまでにないフレーバーが生まれる
- 品質の管理が高度になる
脱穀と出荷を行う
コーヒー豆の精製が終われば、後は脱穀と出荷のプロセスがあります。
脱穀
精製後、乾燥が終わると30~60日間コーヒー豆を寝かせます。
スマトラ式で精製したコーヒー豆以外は、パーチメントが付いた状態なのでドライミルで脱穀を行います。
この時に、コーヒー豆の状態を確認して格付けが行われます。
一緒に異物や欠点豆も取り除かれる
出荷
最後に出荷の為の作業を行います。
通常コーヒー豆は、1袋60kgないし69kgの麻袋に詰められて出荷します。
高品質なスペシャルティコーヒーの場合は、コーヒー豆を保護するために緩衝材や真空にしたダンボールを使用することもあります。