仕事前の気合いを入れたい朝や、ほっと一息つきたい休日の午後、みなさんもスターバックスを利用することは多いのではないでしょうか。しかし、メニューを見上げながら「このドリンク、カフェインはどれくらい入っているんだろう?」とふと気になったことはありませんか。
特に、妊娠中や授乳中の方、あるいは夕方以降にコーヒーを楽しみたい方にとって、カフェインの有無や量は切実な問題です。「ラテならミルクが多いから大丈夫かな?」「抹茶なら健康的だしカフェインは少ないはず」といったイメージだけで選んでしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。
この記事では、元喫茶店マスターの視点から、スターバックスのドリンクに含まれるカフェインの仕組みや、意外と知られていない含有量の真実、そして明日から使える賢いカスタマイズ術までを分かりやすく紐解いていきます。
- スターバックスの主要ドリンクに含まれるカフェイン量の目安と構造
- 妊娠中や就寝前でも安心して注文できるデカフェやノンカフェインの選択肢
- フラペチーノやティーラテに潜む「隠れカフェイン」の注意点
- ライフスタイルや体調に合わせてカフェイン摂取量をコントロールする注文テクニック
スタバのカフェイン量と含有の仕組み

スターバックスのメニューは非常に多彩ですが、カフェインが含まれているかどうかは、基本的に「何がベースになっているか」で決まります。コーヒー豆を使っていれば当然カフェインは入っていますし、茶葉を使っているものも同様です。ここでは、具体的なドリンクを例に挙げながら、その含有構造を深掘りしていきましょう。
ドリップコーヒーのカフェイン量
まず、最も基本となる「ドリップ コーヒー」についてです。実は、スターバックスのメニューの中で、単純な一杯あたりのカフェイン量が最も多い部類に入るのがこのドリップコーヒーです。
ドリップコーヒーは、お湯がコーヒー粉の間をゆっくりと通り抜ける過程で、水溶性の成分であるカフェインがじっくりと抽出されます。エスプレッソのように短時間で圧力をかけて抽出するものに比べ、お湯と粉が接触している時間が長いため、結果としてカップ一杯に含まれる総量は多くなる傾向にあります。
| サイズ | 容量(ml) | カフェイン量目安 |
|---|---|---|
| Short(ショート) | 240ml | 約180mg |
| Tall(トール) | 350ml | 約260mg |
| Grande(グランデ) | 470ml | 約330mg |
| Venti(ベンティ) | 590ml | 約415mg |
注釈:上記の数値は、過去に米国スターバックス等が公表していたデータや一般的なコーヒーの抽出比率に基づく概算値です。使用する豆の種類(ローストレベル)や当日の抽出条件によって変動します。
特筆すべきは、「浅煎り(ブロンド ロースト)」の方が、深煎りよりもカフェインが残りやすいという点です。「味が軽やかだからカフェインも少なそう」と思われがちですが、実は逆。豆を深く焼くほどカフェインの一部は昇華して減少するため、しっかりとした苦味のあるダークローストの方が、成分的にはカフェインがわずかに少ない場合があるのです。
含有量が最強のドリンクとは
「今日は絶対に眠気と戦わなければならない」という時、どのドリンクを選べば良いのでしょうか。単純な濃度で言えば「エスプレッソ」が最強ですが、エスプレッソはソロ(Solo)で約30mlと量が非常に少ないため、摂取できるカフェインの総量はドリップコーヒーのショートサイズ以下になることが多いです。
そこで、私が個人的に「最強」と位置づけているのが、ドリップコーヒーにエスプレッソショットを追加するカスタマイズです。通称「レッドアイ」とも呼ばれるこの飲み方は、高カフェインのドリップコーヒーに、さらに濃厚なエスプレッソのカフェインを上乗せする形になります。
覚醒のための最強カスタム例:
ドリップコーヒー(Venti) + エスプレッソショット追加(+55円)
これだけで、計算上は400mg〜500mg近いカフェインを一度に摂取する可能性があります。
ただし、これはあくまで「ここ一番」の勝負時に限った話です。エナジードリンクと比較しても圧倒的なカフェイン量になりますので、日常的にガブガブ飲むのはおすすめしません。
注意:カフェインの過剰摂取は、動悸やめまい、不安感を引き起こす原因になります。特に短時間での多量摂取は身体への負担が大きいため、ご自身の体調と相談しながら慎重に選んでください。
フラペチーノにある隠れカフェイン
スターバックスの代名詞とも言えるフラペチーノ。「甘いデザートだから、コーヒーのような覚醒作用はないだろう」と考えていると、思わぬ誤算が生じます。実は、多くのフラペチーノにはしっかりとした量のカフェインが含まれています。
例えば、人気の「ダーク モカ チップ フラペチーノ®」を考えてみましょう。このドリンクには、以下のカフェイン源が含まれています。
- コーヒーロースト(フラペチーノ用のコーヒーベース)
- ダークチョコレートパウダー(カカオ由来のカフェイン)
- チョコレートチップ(カカオ由来のカフェイン)
コーヒーだけでなく、チョコレートの原料であるカカオにも微量のカフェインやテオブロミン(類似の覚醒成分)が含まれています。これらが合わさることで、トールサイズ一杯でコーヒー半杯分〜一杯分近くのカフェイン量になることもあります。「コーヒーを飲んだつもりはないのに、夜眠れなくなった」というケースの多くは、この「コーヒーベース × チョコレート」の組み合わせによるものです。
抹茶やほうじ茶ラテの注意点
コーヒーが苦手な方が選びがちな「抹茶 ティー ラテ」や「ほうじ茶 ティー ラテ」。健康的な和のイメージが強いですが、カフェインの観点から見ると、これらも決して「ノンカフェイン」ではありません。
茶葉(チャノキ)を使用している以上、緑茶にもほうじ茶にも当然カフェインは含まれています。特に抹茶は、茶葉を丸ごと粉末にして摂取するスタイルであるため、抽出液だけを飲む通常の緑茶よりも成分をダイレクトに取り込むことになります。
豆知識:一般的に、抹茶1杯(薄茶点前)に含まれるカフェイン量は、ドリップコーヒーの約3分の1から半分程度と言われています。スタバの抹茶ティーラテ(トール)の場合、パウダーの使用量にもよりますが、紅茶と同等かそれ以上のカフェインを含んでいると考えた方が無難です。
「コーヒーはやめてお茶にしよう」という選択が、必ずしもカフェインレスには繋がらないという点は、ぜひ覚えておいていただきたいポイントです。
カフェインが少ないメニュー一覧
では、カフェインを抑えたい時には何を頼めば良いのでしょうか。完全にゼロではないものの、カフェイン量が少ない、あるいはゼロのメニューを整理してみましょう。
まず、もっとも分かりやすいのが「カフェインを含まない素材」を使ったドリンクです。
| カテゴリ | メニュー名 | カフェイン有無 |
|---|---|---|
| フラペチーノ | バニラ クリーム フラペチーノ® | なし(0mg) |
| フラペチーノ | マンゴー パッション ティー フラペチーノ® | ほぼなし※ |
| ティー | カモミール ティー ラテ | なし(0mg) |
| その他 | フルーツジュース各種 | なし(0mg) |
| その他 | ミルク / スチームミルク | なし(0mg) |
※マンゴーパッションティーフラペチーノに使われている「パッションティー」は、ハイビスカスなどをブレンドしたハーブティーであり、茶葉由来のカフェインは含まれていません。
これらを知っておくだけで、夕方以降のカフェ利用や、体調が優れない時の選択肢がぐっと広がります。
妊娠中も安心なスタバのカフェイン対策

妊娠中や授乳中は、自身の健康だけでなく赤ちゃんのことも考え、口にするものに敏感になる時期です。しかし、そんな時期だからこそ、スタバのようなリラックスできる空間で息抜きをしたいという気持ちも強くなるものです。「スタバに行きたい、でもカフェインが怖い」。そんなジレンマを解消するための具体的な対策をご紹介します。
妊婦におすすめのデカフェ変更
スターバックスには、コーヒーの風味を保ちながらカフェインを99%以上除去する「ディカフェ(Decaf)」という素晴らしいオプションがあります。
日本のスターバックスで採用されているデカフェ処理方法は、一般的に「二酸化炭素抽出法」と呼ばれるものです。薬品を使わず、水と二酸化炭素だけでカフェインを取り除くため、豆本来の風味や香りが損なわれにくく、安全性も高いとされています。
プラス55円(税込)で、エスプレッソを使用するほぼ全てのドリンクをデカフェに変更可能です。
- スターバックス ラテ → デカフェ スターバックス ラテ
- キャラメル マキアート → デカフェ キャラメル マキアート
- カフェ モカ → デカフェ カフェ モカ
これにより、「妊娠中だから我慢してミルクだけ飲む」のではなく、「いつもの好きな味を、カフェインだけ抜いて楽しむ」ことが可能になります。心理的な満足度がまったく違いますので、ぜひ活用してください。
完全ノンカフェインのドリンク
デカフェは「99%除去」であって、厳密には「ゼロ」ではありません。ごく微量のカフェインも気になるという方や、医師から厳格に制限されている方の場合は、「ノンカフェイン(カフェインフリー)」のメニューを選ぶのが正解です。
ホットドリンクで特におすすめなのが「カモミール ティー ラテ」です。カモミールはリラックス効果が高いとされるハーブで、ミルクとの相性も抜群。シロップを「ホワイトモカシロップ」に変更(無料〜有料カスタム)すると、ミルキーな甘さが増して、デザート感覚で楽しめます。
おすすめカスタム:
カモミール ティー ラテ + ゼンブミルク(お湯なし)
通常はお湯とミルク半々で作りますが、「ゼンブミルク」とオーダーすると濃厚なミルクティーになり、満足感がアップします。
授乳中も楽しめるカスタム方法
授乳中は、母乳を通じて赤ちゃんにカフェインが届くことを懸念されるお母さんが多いです。また、乳腺炎などのトラブルを避けるために、脂肪分の多い牛乳や生クリームを控えている方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時は、ミルクの種類を変更するカスタマイズが有効です。
- ソイミルク(豆乳)に変更(+55円): まろやかでコクがあり、イソフラボンも摂取できます。
- アーモンドミルクに変更(+55円): 香ばしい風味が特徴で、低糖質・ビタミンEが豊富。
- オーツミルクに変更(+55円): 穀物の自然な甘みがあり、食物繊維が含まれています。
これらはカフェイン量自体を変えるものではありませんが、デカフェのコーヒーと組み合わせることで、よりヘルシーで身体に優しい一杯を作ることができます。
子供に飲ませる際の注意点
親子でスタバを楽しむ際、お子様に何を注文するか迷うこともありますよね。ここで注意したいのが「ココア」です。
「ココアならコーヒーじゃないから安心」と思いがちですが、ココアにも微量のカフェインが含まれています。大人にとっては微々たる量でも、体重の軽い小さなお子様にとっては影響が出る可能性があります。スターバックスには「キッズ ココア」というメニューがありますが、もしカフェインを完全に避けたいのであれば、「キッズ ミルク」や「マンゴー&パッションフルーツなどのジュース」を選ぶのが最も確実です。
注意:抹茶クリームフラペチーノやダークモカチップフラペチーノは、甘くて飲みやすいためお子様が欲しがることがありますが、前述の通りカフェインが含まれています。シェアする際は量に注意しましょう。
夜に選ぶべきカフェインレス商品
仕事帰りや夕食後のひとときにスタバを利用する場合、その後の睡眠の質を下げない選び方が重要です。カフェインの半減期(体内から半分排出されるまでの時間)は個人差がありますが、4〜6時間程度と言われています。つまり、夜8時にコーヒーを飲むと、深夜2時になってもまだ半分のカフェインが体内に残っている計算になります。
夜カフェのお供としては、以下のメニューが「睡眠を妨げない」優秀な選択肢です。
- デカフェ ドリップ コーヒー: 待ち時間がある場合もありますが、抽出したてを提供してくれる店舗も増えています。
- キャラメル スチーマー: キャラメル風味の温かいミルク。ホッとする甘さで入眠前のリラックスに適しています。
- ゆず シトラス & ティー(茶葉変更): 標準は紅茶ベースですが、「パッションティーに変更」とオーダーすることで、ノンカフェインのフルーツティーにアレンジできます。
スタバのカフェインと賢く付き合う
ここまで、スターバックスのドリンクに含まれるカフェインの実情と、それをコントロールする術をお伝えしてきました。
カフェインは決して「悪者」ではありません。朝の目覚めを助け、集中力を高め、会話を弾ませる素晴らしい潤滑油です。しかし、その摂取量やタイミングを間違えると、体調不良や睡眠不足の原因になってしまうのも事実です。
スターバックスの最大の魅力は、その「カスタマイズの懐の深さ」にあります。バリスタさんに「カフェインを控えたいんです」「デカフェにできますか?」と一言伝えるだけで、今のあなたの体調にぴったりの一杯を提案してくれます。
情報を正しく知り、自分のコンディションに合わせてメニューを選ぶこと。それこそが、純喫茶のマスターとしてもおすすめしたい、大人のスタバの楽しみ方です。ぜひ次回のオーダーから、自分だけの「ベストバランス」を見つけてみてください。
※本記事の情報は執筆時点の一般的な成分情報に基づいています。正確な数値や最新のアレルゲン情報などは、必ずスターバックス公式サイトをご確認いただくか、店頭のバリスタにご相談ください。また、妊娠中や持病のある方の摂取許容量については、かかりつけの医師の指示に従ってください。













